伝統技法でモノを作る そんな場は「時短」じゃないほうがいい時もある
陶器絵付けは、イッチンという技法を使っています。
イッチン
文字で見てもよくわからないと思うので動画を。
もっとわかりやすくて素晴らしいものを探してきました。
京都の伝統工芸士・伊藤南山さんの動画をお借りします。
生クリームやチョコソースを絞り出してカタチを作ったり文字を書いたりしますよね。
ああいうのを想像していただければ。
こういうので、線を描いています。
焼成終わって出来上がった絵皿の一部 #artwork #togei #dragon #龍 #陶器 #絵皿 #異界絵師
陶器に絵付け #artwork #dragon #龍 #陶器 #絵皿 #異界絵師
上の阿吽龍絵皿、線描きの状態がこちら。
これだと、イッチンの線よくわかるかな。
阿吽龍皿 #手描き #dragon #龍 #陶器 #いっちん #焼成前 #異界絵師
線は全て、この、口金から絞り出した泥(盛り絵の具)で描いています。
絞り出しの始まりのところがちょっとダマになり、先端は細く。
その「線形の特徴」を活かす線の方向を使って描きます。
お皿を左手に持って回しながら描く感じ。
これに使う絵の具がね。
なかなか、いい感じに作れなくて。
この技法を教えていただいた作家さんに、泣きつきました。
うまく調合できたかどうかは、焼いてみないとわからない。
でも窯がない私には、まず窯に入れてもらえる日まで数週間~2ヶ月くらい待たなきゃならない。
で、もし上手くいってなくて、剥げ落ちてたり色飛びしてたら...次の素焼きができてくるまでまた数週間~2ヶ月待って、絵付けして、本焼きで窯入れしてもらえるまで待って............と。
2サイクル回るのにヘタしたら1年です。
そんなに待ってられない。
だから、無理をお願いしました。
快く分けてくださって、本当に、感謝しています。
もちろん、自分で調合することは試しながらですよ。
今月中に本焼きに入れてもらえることになっているので、次のテスト品も一緒に入れてもらいます。
そのために、少し絵の具の配合を変えたものを作ってまして。
粉末の絵の具にちょっとずつ水を足しながら、練っておりました。
思い出しちゃいましたね。
高校の頃にやった、日本画。
乳鉢ですりつぶした岩絵の具を、膠で練るんですよ。
小さい電熱機の、赤くなったコイルの上に小鍋をのっけて。
棒状の膠を煮溶かす。
粉末の顔料を練って、丸くして。
それを、筆にちょうどいい具合に薄めるわけです。
描き始められるまでに、すんごい時間がかかるの。
私も普段は顔彩などのすぐに使える絵の具を使ってます。
陶器用のも、液状に調合されているものを買っているから、すぐに使える。
盛り絵の具を練りながら、思ったね。
こういう、「時間がかかる」工程は、絵に向かうための精神統一の時間でもある。
護符とか龍印画を描く時は墨を摺るから、その工程がどう活きていくかは知っているのだけど。
粉の絵の具を指で練る感じは、硯で墨を摺るのとはまたちょっと違いますね。
つい、たくさん作り溜めておけば時短になる...とか、思っちゃうけど。
時短していいことと、しない方がいいことってのが、あるよね。
なんでもかんでも便利に省略して、インスタントにできあがってるものを使う。
そうしてできた空き時間をうまく使うのも、いいことだけど。
ここという時、ここという場合は、呼吸を合わせて一つずつ準備していく...というのが大事なんじゃないのかなあ。
...なんて、今更ながら思った午後でした。