目黒雅叙園 世界観の構築というテーマ再三
目黒雅叙園、という場所は、今回の展示会で初めて知った。
初めて訪れた。
一体ここは、何なのか…ということも、ロクに知らなかった。
サイトを見て、なんか凄そう、とは思ってたけれど。
百段階段での展示のこと以外は全く興味がなかった。
ところが。
実際に行ってみたら…だ。
「世界観の構築」という、目下のところ関心の高いテーマを差し出された。
とにかく、徹底している。
徹底的に、作り込んでいる。
細部まで一切ブレなく演出された空間だった。
もちろん、ホテル内や結婚式場には入れない。
だから、そうした一般客が見られないところに、どのようにどこまでの徹底がされているのか(というか、もっと更なる作り込みがあるのではないか…という想像)は、確認できない。
それでも、カフェやショップ、庭園などを散策しただけでも、それが感じられた。
貧乏旅行ばかりしている私も、子どもの頃はけっこうなお大尽旅行を経験している。
実家の父は旅行関連には強い仕事だった&父本人が「いいもの好き」なため、安宿には泊まらない旅行だったのだ。
…ということも、私は大人になって自費で出かけるようになってから気がついた。
巨大な観光ホテルや温泉旅館に泊まってばかりのお子様で、安宿かキャンプ場だったうちの息子達とは天地の差…という。
ただ、今回の目黒雅叙園で感じたのは、ハコのスケール以上の、コンセプトのスケールだった。
先日、36年連続でプロのイチオシに選ばれている加賀屋の本について記事を書いた。
この時も、「世界観を創り上げる」というテーマを考えてる。
今回の目黒雅叙園は、加賀屋の時以上に、印象深い。
おそらくそれは、実際に現地に行って感じたことだからだと思う。
加賀屋に行ったら、雅叙園とはまた別の臨場感でもって、その世界観を感じる…かも知れない。
現地を見ての印象と、本やサイトからだけの印象。
前提条件が全然違うので、今比較してしまうのは良くないけれど。
私は、加賀屋より目黒雅叙園に泊まりたいと思った。
おそらく、雅叙園の「和洋折衷」が、私のツボにはまりまくったからだと思う。
侘び寂びのひなびた感じが好きな私だが、その次に和洋折衷が好きだ。
何も装飾のない庵という雰囲気とは一転した、絢爛な空気。
色でいうなら、まさしく「緋」と「金」
ここのウエディングプランルームに並んでいた結婚式のディスプレイは、和柄の装飾をあしらったウエディングドレス。
演出には、美しい和傘などが使われていて、「うわぁ、これはたまらん」と思った。
(着たい、という欲求ではなくて、綺麗なお姉さんが着ているところを見たい、という欲求である。自分が着たら見れねえだろが)
いや。
細かい理由とか、どうでもいいよ。
とにかく。
あの、全空間を使った徹底した世界構築。
一部のブレも感じられない。
△エントランスの金魚提灯から、奥の庭園を透かし見る。
▽これを、奥の方から見ると、こうなる。
▽カフェラウンジから庭園の滝が見える、絶好のロケーション。
百段階段の展示を見た後、ライブパフォーマンスまで時間がたっぷりあったので、カフェでのんびりした。
非常によい空気で、リラックス&リフレッシュできた。
コーヒーなどの価格は名古屋にある、よく打ち合わせなどで使われる某ホテルのカフェラウンジと同等だが、空気感は全く違う。
似たような価格なのに、滞在している時の充足度は雲泥の差というくらいに違う。
名古屋の方は、どうしてもじゃなければ行こうと思わないけど、こちらのカフェが居住権内にあれば、本当にのんびりしたい時は用が無くても行くかも知れない。
このケチな私ですら、そう思えた。
記念に自分も入ってみた。
こういうことは滅多にしない。
それくらい、気分よかった、ということだと思ってもらえれば。
カフェは吹き抜けだ。
後ろに写っているのは、上方階と、一般客は入れないエレベーター。
滝は庭園にあるが。
館内にも、水路がある。
それと、館内の通路の壁には、豪華で美しいレリーフ。
▽これは百段階段の一室にあるもの。
レリーフになってるのが、わかるだろうか。
全館改修の時、こうした装飾を保存継承して、新しい時代に合う建築物の中に引き継がれている。
百段階段だけは、当時のまま保存されているので、どのような空間だったかが偲べるわけだけど。
当時の絵画を原図にして新しく創り上げた螺鈿と漆のエレベーターなど、とにかく圧倒的。
「目黒雅叙園を知る」というページを見てもらって、その美しさの片鱗を感じてもらえるかと。
ずっと、再三にわたって登場する「世界観の構築」テーマを考えるためのきかっけ。
今回のは、大きかった。
今まで私が目にして体感してきた「これはすごい」と感じる、世界観を作り込んだ事例は、どういうわけかどれも、ジャンルが違った。
西洋アンティークであったり、高級ドールであったり。
「世界観を作り込み、見るものをその世界に浸らせる」という展開こそ共通していたけれど、私の中心的なテーマにある「和」とはズレた事例ばかりだった。
それが、今回のは、ドストライク。
私は「和柄」が好きなんだけど。
京風の、いわゆる「和柄」は、そんなに好きじゃなかったりする。
京都に行くと、観光客相手のお店にずらっと並んでいる、小綺麗でカワイイ「和柄雑貨」たち。
あの雰囲気は、どうも、イマイチ。
あれは違う。
だから、自分が好きなのは、侘び寂びワールドだと思ってた。
実際そうだ。
けれど。
極彩色が好きじゃない、ということではない。
極彩色も、好きなんだよ。
なのに、どうも、よく見る京風和柄は、イマイチ。
でも、今回は、ドストライク。
小綺麗な和柄がどうも、合わない…その理由の一端が、ようやく少し、わかってきた感じ。
この機会をもらえて、本当に、感謝している。