熱から遠く離れたとある一幕
あの日、二人は、その同じ場所にいて、同じ空気を吸いながら、同じものを見た。
あふれかえる賛辞。
その中にいて。
二人は、沈黙を選んだ。
暗黙のうちに。
ごく自然に。
打ち合わせたわけではなかったけれど。
語らないことを、それぞれが、選んでいた。
二人の立ち位置は少しずつ違っていたし。
視点も見方も、少しずつ違っていた。
それでも、薄膜の向こうに見てしまった。
「飾り付けられたガラクタ」を。
そして、沈黙する選択をした。
もはや戻らないとわかってしまった熱を、惜しみながら。
熱の渦から遠く離れて。
かつてその中に身を置いてみたことすら、どこかの誰かの経験だったかのような感覚になりながら。
二人とも、から騒ぎにしか聞こえないその音を眺めやる。
そんな一幕が、あったとさ。