小布施で北斎と改めて出逢う/岩松院~北斎館~髙井鴻山記念館
長野ツアーの私的本命は、北斎翁だった。
そう。
本心は。
神社は、二番目。
もちろん、行かなきゃいけないところだったから行ったんだし。
急に行くことに決めたのも、行かなきゃ行けない急き立てられ方がハンパなかったからなんだけど。
それでも。
地理もそんなに詳しくないし、方向音痴な私は、「戸隠」がどこにあるのか、よく知らなかった。
でも、長野だということは知っていた。
行くなら諏訪とセットだ、とも思っていた。
だが。
私には、「新潟に近い長野」という認識で、神とか関係なしに、どうしても行きたい町があった。
それが、小布施。
新潟に近い、ということは、かなり遠い、ということだ。
いつ行けるだろう。
目的が目的だから、私は自分一人で行くほうがいいだろうか。
そんな風に、ずっと考えていた場所。
なぜそんなに、そこに行きたいのか…って言ったら。
そこで、北斎が晩年を過ごし。
肉筆画を描き。
それが、現存していていつでも見ることができる寺の天井にある。
と、知っていたから。
八方睨み鳳凰図。
21畳分の巨大な絵。
どうしても、それを見たかった。
北斎直筆の鳳凰の天井画がどこかの寺にある
↓
小布施の岩松院という寺らしい
↓
新潟に近い長野にあるらしい
↓
小布施という町らしい
という順番に知った。
今年に入ってから、たびたび諏訪のことが身辺に登場するようになり。
いよいよ、行かなきゃならんのかな…と思っていて。
しかし、いささか懐事情がよくなかったので、見送りたいなとも思っていて。
そんな時、全然別件で、またまた小布施のことを考える機会があって。
いつ行けるかなあ…と思いながら、Googleマップで小布施を見てみた。
ん?
あれ?
なに?
ここ、もしかして、戸隠近いの?????
ルート検索してみたら……
めっちゃ、近かった(^_^;)
つーかさ…
戸隠-諏訪なんか目じゃないくらいじゃん。
小布施って、戸隠のお向かいみたいなもんじゃん…。
なにそれ。
もう、これは、アレだね。
褒美だね。
だって、戸隠と諏訪が、たぶん最後の「どうしても行かなきゃいけない参拝場所」で。
どうしても行きたい小布施は、こんなに近い。
そして、懐の方もなぜかクリアできてしまったのは、こちらに書いた通り。
一日を戸隠に、もう一日を諏訪にあてて。
一日は、私の褒美(あるいはエサ)で、北斎Day。
よし。
小布施に一泊しよう。
戸隠に最初に行って、小布施に移動して泊まる。
そうすれば、ゆっくり小布施で過ごせる。
夜までに諏訪に着いて一泊したら、朝から大社巡りして十分帰ってこられる。
こうして決まった、長野ツアー。
なんだかんだ言って、こういう風にちゃんと、オイシイところを持ってきてくれるから。
私のような、ツボがわかりやすい人間は、簡単に餌付けされてしまうんだよ。
戸隠を後にして、ダンナの希望で善光寺へ立ち寄り。
そこから、小布施へと向かう。
善光寺の空。
思いのほか早く小布施に着き、チェックインに少し早かったので、翌日一番に行く予定の岩松院の場所を確認に向かった。
これも、たまたまだけど、岩松院から宿は近かった。
岩松院横の、登山道へ向かう小径。
桜が満開&花吹雪。
戸隠は雪がまぶしかったけど、こちらは春爛漫という風情。
夕方から雨の予報だったが、降ることもなく宿にチェックインできた。
宿の駐車場からの景色。
右手の画面ギリギリ、奥の方にある白い山が、戸隠。
翌日は朝から雨という予報だったけど、室内の観覧が主体になるので、あまり気にはしなかった。
が、予報は外れて、翌日も快適。
いよいよ、岩松院。
内部の写真は、もちろん、ない。
人が歩くわずかな震動が、顔料の剥落を引き起こしているという。
フラッシュとか、とんでもない。
当然撮影禁止。
鳳凰図はリンク先の公式サイトに載っているので、そちらでどうぞ。
行ってみて初めて知ったんだけど、ここは、福島正則公の菩提寺なんだそうな。
福島正則といえば、秀吉の家臣。
実は、我が家のほんの近いところに生家があるのだ。
よもやの、地元の名士の終焉の地が、ずっと行きたかった場所と同じだった…という。
なんだかなあ。
そうそう、岩松院は曹洞宗の禅寺。
曹洞宗といえば、総本山は永平寺。
福井である。
なんだかなあ。
岩松院の後は、北斎館へGO。
肉筆画美術館だよ、肉筆画!
浮世絵は、絵師が原画を描き、彫り師が版木を彫り、刷り師が刷って一枚の絵になる。
印刷工程が確立されたものだ。
作品そのものは、各工程の職人の手を経て出回るもの。
でも、肉筆画は違う。
北斎が、直接、描いたものだ。
娘の応為や、門人の作品もあった。
そして、ここに来なければ特に気にしないで終わっただろう、北斎を小布施に呼び寄せた髙井鴻山という偉人。
高井鴻山記念館|信州小布施 案内図録 小布施日和|小布施文化観光協会
この記念館がまた、想像以上によかった。
知り合った頃、北斎は80歳手前、鴻山は30代半ば。
親子みたいな二人の出会いが、北斎を更に数段、飛躍させてくれた。
人間に寿命があるってことが、ホントに、残念に思える。
北斎本人も言い遺したように、後5年あれば…10年あれば…
すでに妖怪じみている90歳の爺さんは、さらに化け物になったろうに。
北斎Dayの〆に、小布施名産の栗のスイーツで一休み。
店に入った直後、雨が降り出した。
長野ツアーの中日は、心の師匠に浸れる日になった。
雨も待ってくれたので、ぶらぶら散策しながら、整えられた小布施の町並みも楽しめた。
神はしばしば無理なことを要求してくるけど。
こうやって、有り余るほどの褒美をくれることもある。
浮世絵ではない、肉筆画の北斎に興味がある方は、北斎館刊行の図録をオススメする。
もちろん、私も買ってきた。
浪の絵は、以前「心の入門」とか言って、筆ペン練習に使わせてもらったことがある。
やってみて、ますます実感した「化け物ジジイ」だった。
また、時間を作ってやってみるかな…龍とか鳳凰とかで。
玉砕前提で(笑)