思考が邪魔
思考が邪魔だ。
「人間は考える葦である」という通り、私は考えることが好きだった。
いや、今でも好きだ。
愚にもつかない抽象論をつつき回して遊ぶのは楽しい。
でも。
その嗜好そのものを、猛然とぶっ飛ばしたい気分になることがある。
頭の中が忙しい、とはよく言ったもんだと思う。
脳内会議は果てしなく延々と続き。
寝ても覚めても、なんか考えている。
もう、本当に、邪魔だ。
自分の思考がただのノイズにしか思えなくて。
自分の頭を吹っ飛ばしたくなる。
物理的にという意味ではないが。
頭は時として、手の働きを妨げる。
若い頃のようには、それだけに没入するということが、できにくくなっている。
クソ皮肉なことに。
スムーズに没入できていた若い頃には見えなかったヴィジョンが、今はある。
それが来ると、今の自分自身のシンクロ率が低すぎて、すごくストレスになる。
神経回路のつなぎ目に何かぐにゃっとした障害物が挟まっているような。
安物サンダルのゴム底が剥がれはじめて、踏むたびにずるっと滑るみたいな、なんとも嫌な感触がある。
どうしても薄皮が取り切れない剥きにくいゆで卵みたいな気分になったり。
透明な仕切りで隔離されているような気分になったり。
そんな嫌な気分を、いちいち確認して、言語を割り振って、記憶して、こんな風にして文章を書いて。
それ自体がもう、邪魔だ。
蹴破ってやりたい。
蛇が脱皮する前って、こんな感じなんだろうか。
なぜ、頭を外してしまうことができないのだろう。
せめてスイッチの場所がわかればいいのに。